2026.07.03 四季養生
四季養生Vol.21 プロフェッショナル養生訓
胃腸健康の達人
宮本内科胃腸栄養クリニック 院長 宮本 彰俊 先生
テーマ「腸の元気が脳の元気に!」

消化器内科医として胃腸の診療を専門に、多くの患者様と向き合ってこられた宮本先生は、栄養を補いながら治療を行うだけでなく、「なぜその症状が起きたのか」という根本原因に着目した診療を大切にされています。
特に、胃もたれや便秘、下痢などの不調の背景には、血糖値の乱れや腸内環境の悪化が関係しているケースも少なくないといいます。今回は、『胃腸と脳の健康との深い関係』について、お話を伺いました。
年齢とともに進む〝腸力低下〞
加齢に伴い、まず消化機能では消化液の分泌量が低下します。さらに、消化管の動きも弱くなり、全体的に消化能力が落ちていきます。
また、腸内環境も同様で、善玉菌と呼ばれる有用菌が年齢とともに減少していきます。加齢による変化として、「消化力の低下」と「腸内環境の悪化」の2つが特に大きい問題です。
「善玉菌は年齢とともに減る」と分かっているわけなので、意識して増やす努力が大切です。これは、たとえば足腰が弱るのは、「年齢のせいだから」と何もしないとますます足腰が弱ってしまうのと同じことです。
消化力低下を感じたら「自律神経」と「ミトコンドリア機能」
消化液が十分に出なくなる要因には、大きく2つあります。 一つ目は、「自律神経の働き」です。消化液は、副交感神経が優位な状態でしっかり分泌されます。交感神経優位になると、消化液は出にくくなってしまいます。
そのため、食事中は”ながら食べ”を避け、食べることに集中することが大切です。リラックスした状態で、ゆっくり楽しく食事をすることが、胃腸の働きを助けます。
そして二つ目が、「ミトコンドリア機能の低下」です。(ミトコンドリア機能については、前号掲載の記事もぜひご覧ください)
体内で消化液を分泌するには、多くのエネルギーが必要です。つまり、”液を出す”という働き自体に、かなりのエネルギーを使うのです。しかし、加齢や老化などによってミトコンドリアの働きが低下すると、エネルギーが十分につくられず、消化液の分泌も弱くなってしまいます。
また、食べものをよく噛むことも非常に重要です。噛む刺激によって、「これから食べものが入ってくる」という信号が胃に伝わり、胃液の分泌量も大きく変わります。逆によく噛まずに飲み込んでしまうと、胃の準備が整わないまま食べものが送られてしまいます。特に、歯が少ない・噛みにくい状態は、消化に大きく影響します。しっかり噛めること、そして噛み合わせを整えることは、胃腸の健康を守るうえでとても大切なのです。
腸と脳は密接につながっている
「腸脳相関」とは、腸と脳が互いに影響し合う関係のことを指します。主な経路は、大きく3つあります。
まず一つ目は、「神経回路」です。特に、脳と腸をつなぐ”迷走神経”を介して、腸と脳が情報をやり取りしています。
二つ目は、「ホルモン」です。腸では ”幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンなどの神経伝達物質が作られており、それらが脳の働きにも影響を与えています。
そして三つ目が、「炎症」です。炎症を伝える”サイトカイン”と呼ばれる物質を介して、腸の状態が脳へ影響を及ぼします。例えば、腸内環境が乱れると腸に炎症が起こり、その炎症性物質が血流に乗って脳へ波及することがあります。こうした慢性的な炎症が、脳機能の低下につながる原因の一つとも考えられています。
また、セロトニンが不足すると、脳内のセロトニン量も減少し、気分の落ち込みやうつ症状などが現れることもあります。(これらが認知症とどの程度、直接関係しているのかについては、現在も研究が進められている段階です)

認知症リスクと腸内環境
認知機能の低下につながる要因としては、「栄養不足によるもの」「腸の炎症が関係するもの」、そして「有害物質によるもの」など、大きく3つのパターンがあると考えられています。有害物質とは、 有害金属やカビ毒などのことです。もちろん、これはアルツハイマー型認知症などの一般的な分類とは別の視点による考え方です。
そして、これらはいずれも胃腸と深く関わっています。栄養不足は消化・吸収力の低下と関係しますし、炎症も腸内環境の乱れが影響します。さらに、本来なら体内に取り込まれにくい有害物質が入り込みやすくなることも、腸の状態と無関係ではありません。その意味でも、「脳の健康は腸から始まる」といえるでしょう。
認知症は栄養補給で予防できる

認知症予防は〝早めの栄養補給の知恵〞がカギ
腸に炎症が起こると、その炎症は腸だけにとどまりません。炎症性サイトカインと呼ばれる物質が血流に乗って脳へ届き、脳機能へ影響を及ぼすのです。さらに、腸のバリア機能が低下すると、脳のバリア機能も緩みやすくなり、 異物が脳内へ入り込むきっかけをつくってしまう可能性があります。
実は、これは皮膚にも同じことがいえます。腸のバリア機能が乱れると、皮膚のバリア機能も低下しやすくなるため、アトピー性皮膚炎なども”皮膚だけの問題”ではなく、腸内が深く関わっていると考えられています。そのため、「栄養療法」を目的に来院される方も少なくありません。実際に、腸内環境や栄養状態を整えることで、症状の改善につながるケースも数多くありました。
これからは、認知症も”栄養で予防する”という考え方が重要になります。腸活も含めて栄養が大切です。
四季折々の「旬の食材」は〝栄養の宝庫〞
内臓の温度が下がると、血流も低下し、胃腸をはじめとする内臓の働きも弱くなってしまいます。もちろん、高すぎる体温も負担になりますが、体には適切な温度が大切です。そのため、冷たすぎる飲みものや食べものの摂り過ぎには注意が必要です。一時的に体温を下げる効果はありますが、栄養の消化・吸収という面では、あまり良いことではありません。
真夏になってからの対策ではなく、暑くなる前から、きちんと栄養のある食事をとって体を整えておけば、秋になっても食欲が極端に落ちることはありません。
患者さんには、昔から日本で食べ継がれてきた”四季折々の旬の食材”をしっかり食べていれば、大丈夫ですとお伝えしています。旬のものには、その季節を元気に過ごすための眼に見えない力があります。日本人の体は、もともとそうした食文化に合うようにできているのです。
例えば、季節の野菜や肉を入れた味噌汁などは、それだけでも栄養バランスの良い一品です。出汁には、ミネラルやアミノ酸が豊富に含まれていますし、さらに煮干し粉などを加えると、魚を丸ごといただくことと同様で、栄養を余すことなく摂ることができます。そんな日本の風土や生活に根差した昔ながらの食べ方には、胃腸から健康を支える知恵がしっかりと詰まっています。
宮本内科胃腸栄養クリニック
〒819-0167 福岡市西区今宿3丁目4-37 今宿メディカルビル1F
TEL:092-805-1380
当クリニックは、地域に根ざしたかかりつけ医としての役割を大切にしながら、胃腸と栄養を専門とする内科クリニックとして、これからの時代に求められる医療を実践していきます。

