株式会社イオス

2024.03.01 お知らせ, 四季養生

プロフェッショナル養生訓 薬膳の達人 尹 玉先生

各分野のプロフェッショナルにインタビューをした季刊誌・四季養生の
『プロフェッショナル養生訓』です。

今回のプロフェッショナルは薬膳の達人 尹 玉(イン ユイ)先生の1回目です!

東方薬膳学院 学院長
尹 玉先生

テーマ『薬膳を実践し心と体を整える』

薬膳とは?

「薬膳」と聞くと美味しくない、特別なものとイメージしがちですが、
実は、普段スーパーで売られているような食材は全て薬膳素材です。
私達が食べているもので薬膳の食材でないものはありません。
全ての食材には効能があります。生姜は体を温かくしますし、大根は
消化を助けます。「薬膳」とは、普段とっている食材の性質を正しく
理解し、自分
の体に合うものを、目的に合わせて食べることです。
例えば、体が今冷えているなら温める性質のある食材をとり、熱がある
なら冷ます性質の食材をとり、乾燥しているなら潤す食材をとります。
まず大前提として自分がどんな状態かを知り、食材をとり入れる、それ
が薬膳です。生薬を使っているから薬膳なのではありません。確かに生薬
と言われるものは効果を早めに感じやすいので、使うこともあります。
ただ、生薬が逆にリスクを増やしたりすることもありますから、薬膳では
生薬を使う場合、その人に合わせて正しく活用します。

薬膳の役割は「陰陽」のバランスを整えること

私たちは昼と夜など二元対立した世界に住んでいて、薬膳では、宇宙は陰と
陽の相互作用によってできていると考えます。そして私たちの体も陰と陽の
エネルギーで構成されています。この陰と陽のエネルギーを「気・血・水
と呼びます。「気」は目に見えないエネルギーのことで陽の性質を持ち、「血」
(血液)や「水」(体液)は物質で形があり、陰のエネルギーを持ちます。
この「気・血・水の状態が健康状態を決めます。陰が過剰であれば、水分
代謝が悪くなりむくみが出ます。逆に陽が強いと乾燥します。陰と陽は離れ
られない関係なのです。「気」のエネルギーがあるからこそ食べたものを
「血液」に変化させ、陰のエネルギーを作ることができます。このように
陰と陽は、互いに相手があって成り立つ関係であり、陰陽のエネルギーは
私達の体に影響を与え、病気になるかどうかも決まります。なので、食を
通してこの「気・血・水」の陰陽のバランスを調整し、一方が強くなりす
ぎないよう、そのバランスを整えることが薬膳のメインテーマなります。

薬膳とは目的に合わせて食すことで、体は人それぞれに違います。万人に
共通する事は【陰陽のバランスを整えること】です。前述のとおり、食材にも
陰陽の性質があり、体を温めるもの、冷やすもの、潤すもの、乾燥させるもの
があります。料理をする前にその人の陰陽のバランスがどうなっているのかを
見て、陽が不足していれば陽が多い食材を使います。全ての人に合うレシピや
食材はありません。人それぞれ陰陽のバランスは違うので、それぞれに合わせ
た食事がその人の薬膳となります。残念ながら、薬膳レストランでは、1人ずつ
の陰陽のバランスに合わせて作るわけにはいかないので、例えばその時季に
影響が出やすい体の部位を補うものを季節の食養生として提供します。

春は解毒の季節

冬は貯蔵の季節で、ぎゅっと体の中にため込む時季、もちろん良いものだけ
じゃなく、脂肪など体に不必要なものもため込みます。さらに、冬は水分代謝
も悪くなります。そして季節が春になると陽の気が上昇して体の活動が活発に
なり、体外に不要なものを出しやすい解毒、排泄の時季となります。
これは肝の陽の働きの一つです。

春に起こりやすい不調

春は自然界では植物が芽吹く季節。人間の体の中でも肝(肝臓)の陽気が動き
ます。人によっては強く動き過ぎてしまい、体にのぼせが出ます。肝の陽気が
上昇しすぎるとイライラしたり、怒りっぽくなる、目の充血、花粉症、血圧が
高くなるなどの症状が出てきます。さらにめまいや頭痛なども出たりします。

薬膳による春の養生法の基本

春は、解毒作用が盛んになるため、疲れやすくなっている肝を労り、エネルギー
を回復させ、肝の気の流れを促すもの、肝血を補うもの、さらに、胃腸が弱り
やすいので、それを補う食養生が基本です。肝の疲れには特に意識して酸味
とりましょう。逆に気が上がらずやる気がなくなっているような場合は、発酵系
のものやピリ辛系のもので、発散を促し、気の巡りを促しましょう。さらに、
香りの強いもの、例えばベビーリーフなどで気を巡らす工夫をすれば解毒しやすく
なります。発酵食はこの時季にはすごく有効ですから、酵素食品(酵素飲料)などは
食養生の一つとしてとり入れてみてください。

人それぞれで異なる春の薬膳

食べたものをしっかりと血液にできるような健康な胃腸であることは最も大切です。
薬膳での「気・血・水」とは、食材は気が満たされていなければ、血にならないと
考えますので、食事もサプリも皆と同じものを盲目的にとるのではなく、体質、体調
の陰陽バランスを考え、自分に合ったとり方をする必要があります。つまり、Aさん
には薬になってもBさんには毒になる食材もありますので、テレビやインターネット
など巷の一方通行の健康法やダイエット法などを鵜みにせず、今の自分に何が必要
なのかをしっかりと理解していただきたいのです。繰り返しますが、すべてのもの
には、陰・陽、表・裏、作用・反作用がありますので、万人に同じ答えの薬膳は
ありません。自分が今、補うべきはどこなのかを考えて食すことが大切です。
食以外の生活習慣で春の時季に気を付けていただきたいのは、ストレスを避け、
のびのびと過ごすこと。肝は「ストレスの臓器」とも言われ、ストレス状態が続くと、
肝だけでなく体も「鬱(うつ)」の状態になってしまい血液や体液の流れが悪化します。
春は何かと環境が変わる季節で、人間関係のストレスも起こりやすく気を付けたいです。
肝に血液(肝血)がしっかりと満たされていれば、ストレスに対する適応能力も備わる
と言われます。

 

「薬膳」を知り、豊かな健康生活を

安直に「がん」に効くものを探すのではなく、まずは、がんになった原因から考え
ましょう。がんはそれまでの生活習慣の結果に過ぎません。今表に出ている症状を
取り除くのではなく、「気・血・水」のバランスをとることを考えることが先です。
ここが西洋医学の考えと異なるところです。自分でつくってしまった病気は、自己
の治癒力でしか治せないという考え方が必要です。薬膳とは、自然の声に逆らわない
なんです。自然のエネルギーの状態がどう動いているのか。自然のバランスが
どうなっているのか、すべて自然の法則を基本とした、実は自然科学そのものです。
薬膳を妙なもの、ニッチなもの、怪しいものと思ってしまうのはすごくもったいない
考えだと思います。
以前、栄養学を教えてらっしゃる大学に、薬膳の授業の提案をしたことがありました。
今の栄養学は全体だけを見て個人を見てないと思えたからです。食材にどんな栄養成分が
入っているかを見ているだけ。すべての方にビタミンCは1日100gをとりなさいってだけに
なっているんです。体型はもちろん、吸収力も人それぞれ違うのに、みんな同じ栄養分を
とればよいというのはおかしいとお話ししましたが、カリキュラムにはないとの事で残念
ながら提案は聞いていただけませんでした。
肝血が不足した時の食材、解毒の時に必要な食材、気の巡りが悪く、精神的なストレス症状
が出る肝気鬱結(かんきうっけつ)の時の食材、冷えている方への食材、肝の熱が上がり怒り
っぽくなっている方への食材など、春の食材でも人それぞれ必要な食材は異なります。体調が
不安になるとすぐ病院に行き薬をもらう。その薬の副作用で、また病院を頼らなきゃいけなく
なる。結局、薬漬けになってしまう。このような負の連鎖を断ち、今から正しい生活習慣に
挑戦してください。今の自分の「気・血・水」のバランスをしっかりと理解してください。
薬膳が持つ「力」に気付けば、必ず本来あるべき健康生活を取り戻すことができるはずです。

PROFILE

東方薬膳学院  学院長
尹 玉先生

福岡市内で薬膳師の養成スクールと隔週月曜日に薬膳食堂をやっています。薬膳食堂は、
薬膳師養成コースを受講し、卒業した生徒達がチームを組み、テーマに合わせたメニュー
を考案し提供していてとても好評でファンも多いです。
食堂は生徒達にとっては実践の場、お客様にとっては体験の場になっています。

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