株式会社イオス

2022.12.01 四季養生

プロフェッショナル養生訓 漢方・養生の達人 矢野 久美子先生

各分野のプロフェッショナルにインタビューをした四季養生の『プロフェッショナル
養生訓』です。

今回のプロフェッショナルは漢方と養生の達人 矢野先生です!

漢方薬局 安樹堂(あんじゅどう)
店主・漢方薬剤師 矢野 久美子先生

「冬の養生法」

漢方(東洋医学)には中国最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」というものが
あります。養生についていろいろ書かれているのですが、なかでも冬は体を温めて
体調を崩さないようにすることが大切と記されています。
冬は腎臓の「腎」が弱る時期、影響を受けやすい時期と言われています。ここでいう
腎とは陰陽五行説で腎臓だけでなく髪・膀胱・耳・骨を含む「腎」という捉え方の
ことです。腎は生命の源と考えられ、ここが弱ってしまうと老化が進んだり、寿命に
も大きく関与しています。腎はからだ全体のエネルギーを産み出す場所ですから、
腎が弱る冬の間にしっかり養生して腎を強くしてあげることで、冬に蓄えたエネル
ギーを使って次の一年間を元気に過ごすことができるようになっているのです。
動物や虫が冬ごもりするのと同様に人間も一年のエネルギーを蓄える重要な時期な
のです。体や内臓を冷やすことは腎を傷つけることになります。つまり腎が弱る原因
が「寒さ」なので、体を冷やさないことが冬の養生ではとても大事です。

養生には時差があって次の季節に結果が表れる
養生とは長いスパンで捉えるべきで、冬に無理したからその冬に調子を崩すといった
ことではないんです。冬に無理をした人は春先に調子を崩す人がとても多く、本来は
次の季節に不調が出てくるようになります。症状は風邪を引いたり、疲れやだるさで
寝込んだりが多くなるのですが、自律神経の乱れも出ます。自律神経失調症のような
感じですごくイライラするとか、うつになるとか。この原因は冬の養生がうまくいっ
てなかったと考えます。冬の養生のポイントは「閉蔵(へいぞう)」です。蔵の戸をき
ちっと閉めるという意味で、私達の体もきっちり閉じて漏れないようにしましょうと
いうことです。だから冬は極力新しいことを突然始めたりするのは控えた方がよい
しょう。新しいことをすると普段よりもエネルギーを使いますので、本来は蓄えるべ
き冬に消費してしまうと春先にはエネルギーがスカスカになって体調を崩すんです。

腎にとって大切な冬にやるべき3つのポイント
冬の養生は次の3点です。「まず体を冷やさないように温めること」さらに、早寝遅
起きでもいいから夜は「睡眠をよく取ること」。そして「無理しないこと」この3つ
です。これができていれば一年分のエネルギーは冬の間にしっかり補われます。つま
り、消耗させないことが極めて大事だと考えてください。特に冷えについては、夏に
冷やし過ぎると体の奥に冷えが溜まってしまい、冬に影響が出てきます。夏は冷房で
冷やし過ぎたり、冷たい物の食べ過ぎには注意してください。夏の不養生によって冬
に調子が悪くなりますので気を付けましょう。腎は西洋医学的に言えば内分泌系、つ
まりホルモンでもあります。この腎が減り始めるのが40代から50代以上で、閉経
や更年期が一回ガクンと弱る時期です。どんなに元気に見える人でもこの年齢になる
と絶対にすり減ってきますので腎を守ることが大切なのです。冬に養生すれば腎はし
っかり補われて、その後の一年を元気に過ごせますし、アンチエイジングにもなりま
す。自分は元気だからと薄着で寒いところに出かけて行って、体を冷やすと腎がすり
減ります。特に下半身の冷えには気を付けましょう。薄着は高齢になればなるほどや
っては駄目なことなんです。これらをしっかり意識していけば、腎が強くなって、結
果、一年間健康で若々しくいられます。よかれと思って頑張り過ぎてボランティアに
一生懸命になったり、孫のためにと頑張り過ぎたりせずに、とにかく冬は無理をしな
いことです。

冬の養生には黒い食材がおすすめ!
もちろん食の面からも対策はできます。食べ物にも全部性質があって、体を温める食
材として黒ゴマ、黒豆、海藻などの黒い食材が良いと言われてますし、発酵食は代謝
が良くなるというメリットがあります。また乾燥した生姜やシナモン、山椒などのス
パイス系は、身体の深部を温め血行を良くしてくれます。特に旬のものは本当に理に
叶っていて、冬の食材は体を温めてくれ、食べるだけで自然と養生になります。お鍋
は冬の野菜をたくさん摂れる上に、加熱と薬味によって内側から温まりますから冬に
最適です。特に腎には「黒ゴマ」をおすすめします。黒ゴマといっても粒そのものよ
りは、すりごまや練りごまがベストです。擦り潰してあるから一番栄養の吸収が良く
、補腎するのに最適です。ただカロリーが高いので摂りすぎには注意して、ティー
スプーン一杯くらいを毎日摂れば、腎が本当に強くなってきます。ハチミツで混ぜれ
ば食べやすくなります。毎日作るのは面倒ですから酸化しない程度の1ヶ月以内に食
べ切れる量を作り置きしておけば実践しやすいです。毎朝スプーン一杯舐めてもいい
し、パンに塗ったり、和え物にして召し上がるのもいいでしょう。潤いの補給にもな
るし、白髪が黒くなります。髪にツヤが出たり、抜けにくくもなります。たとえ全部
黒くならない人でも、抜いた時に根本が黒くなったという声を聞きます。髪の毛も腎
なので、補腎の力が強くなることで結果が髪に現れてくるんです。黒ゴマは実際に髪
の漢方薬として使用されていますし「髪は腎の華」と言われるように漢方のプロも髪
のために処方もしています。

なぜ冷えの悩みが女性に多いのか?
補腎のための食養生に欠かせないのがお腹を良い状態に保つことです。たとえどんな
に黒い食材を摂っても、栄養があるものを摂っても、お腹が弱いと吸収しないから
す。具体的に言えば、腸や小腸、胃を含んだ消化吸収システムを良い状態にしておく
こと。ここがうまく機能していなければ食べたものをちゃんと吸収できませんので、
どれだけ腎にいいものをたくさん食べても意味がなくなってくるのです。お腹は健康
の基本です。私の薬局でも冷えについては女性の相談がとても多いと感じています。
女性は男性よりも筋肉が少ないから冷えやすいのです。つまり筋肉は熱を発生させま
すので、筋肉が少ない女性の方が熱が少なくなりやすいのです。かといって鍛えすぎ
体脂肪が低くなりすぎるとまた体が冷える傾向になります。体脂肪には熱を逃さな
いように体を守る役割があるからです。だから体脂肪5%のムキムキな人は風邪をひ
きやすくなる傾向があります。標準的な人には通常あるはずの体に一枚まとってある
脂肪がないために、外からの寒さをダイレクトに受けるからです。何事も行き過ぎに
は注意ってことですね。基本は熱を発生させるために筋肉をほどほどにつけて、かつ
保温してくれる脂肪もなくならない程度に鍛えるのが一番の秘訣です。また女性の場
合は生理や出産があるため、どうしても血が足りなくなりやすくなります。血液は栄
養を運ぶだけではなく、血液自体が温かいということにも意味があります。温かい血
液が隅々まで巡ることで末端まで温まるのです。高コレステロールや中性脂肪が高い
ことで血がドロドロになっている方は瘀血(おけつ)と言われ、末端まで血液がいかな
くなります。血が綺麗かどうかで血流は大きく変わっていきます。

冬の閉蔵・補腎が一年の健康を左右する
最後にまとめとして、冬の養生は春の養生でもあり、一年の養生でもあるということ
を覚えておいてください。冬に養生したことは春先に結果が出てきます。冬に閉蔵し
て補腎をすることは、そこからの一年を健やかに過ごすために重要です。冬に養生を
しっかりやれば一年間を元気に過ごせますが、冬に養生をしないと一年間調子が悪い
状態になるということを肝に銘じておいてください。それぐらい冬の養生とは他の季
節の養生と比べて大切なのです。

PROFILE

漢方薬局 安樹堂(あんじゅどう)
店主/漢方薬剤師
矢野 久美子先生
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TEL 092-985-6573
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