株式会社イオス

2023.03.01 四季養生

プロフェッショナル養生訓 健康運動指導の達人 今井 淳一先生

各分野のプロフェッショナルにインタビューをした四季養生の
『プロフェッショナル養生訓』です。

今回のプロフェッショナルは健康運動指導の達人 今井先生です!

NPO法人 cocofull(ココフル) 代表
今井 淳一先生

テーマ『フレイル予防』

私は、健康を維持するための体操とトレーニングを指導していますが、
特に現代は運動が健康にとって欠かせないものになっていることを日
々感じています。ひと昔前は普段の生活の中で体を動かす機会が多か
ったため、自然と体力は培われていました。今の時代は働き方や生活
スタイルが急激に変化して昔と比べると体を動かさなくなっています。
特に地方にお住まいの方は車移動が多いため都会にいるよりも歩く機
会が少ないです。一方、都会では電車をよく使いますので駅の乗り換
え移動などで意外と多く歩いています。コロナ禍で家にこもり体力や
筋力が著しく低下したり、自転車で行っていた近くのお店やコンビニ
までも車で行く。洗濯は洗濯機に入れるだけで済み、掃除はロボット
がやってくれるといった今や普通になっている便利な生活スタイルは
日本人が生活の中で自然と行っていた体を動かすことや汗をかくこと
をしなくてもよくなりました。ですから、今はあえて「運動する」こ
とを意識的に行う必要があります。あまりにも便利になりすぎた代償
として、人としての大切な動かす機能が徐々に失われて健康的な生活
を送る妨げになっているのではないかと思っています。

フレイルサイクルという悪循環

私の教室の生徒さんで、特に80代の方は、以前と比べて運動能力が落
ちてきていると危機感を抱いています。そうなるとフレイルサイクル
(※1)という負のサイクルに陥ってしまいます。つまり、「体力がなく
なる」→「サルコペニア(筋肉量が減少し、歩行速度が低下)・ロコモ
ティブシンドローム(※2)になる」→「筋力が低下する」→「身体機
能が低下する」→「活動量・運動量が低下する」→「エネルギー消費
量が低下する」→「食事量が低下する」→「慢性的な低栄養」→「体
力がなくなる」という悪循環です。この悪循環を断ち切らなければ、
ゆくゆくは要介護状態になる可能性が高くなります。体が痛いとか体
が動かなくなるのは歳だから仕方ないと思い込み、積極的に生活スタ
イルを改めていこうとしないし、無理だと思い込んでしまっている。
悪しき現実を受け止めてあきらめてしまっているメンタルを変えるこ
とから始める必要があります。

(※1)年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、健康と要介護の間の虚
弱な状態のこと
(※2)筋肉や骨などの運動器に障害が起こり、日常生活に支障が発生し
ている状態のこと

運動した方がいい痛みと運動してはいけない痛み

専門家から適切な運動指導を受けて、日々の自分に合ったトレーニン
グを実践することで、シニアの方も一度悪化した体の機能は改善でき
ますし、しっかりと動けるようになります。気をつけていただきたい
のは、自らの勝手な判断や浅い知識で運動やトレーニングを始めてし
まうことです。はじめは運動の専門家に自分の今の状態に合った適切
な運動法と運動量を指導してもらってから、始めることが大切です。
運動といえば、より多く走ったり、より多く歩けばいいと思いがちで
す。真面目な方や健康意識の高い方ほど頑張りすぎて行き過ぎた量の
運動をされます。運動はやればやるだけいいという訳ではなく、年齢
や今の体の状態に合った適切な運動量がありますので、それを守って
行うことが健康運動の秘訣です。目安として1日の歩行量を示していま
すので、参考にされてください。私の教室の生徒さんには、運動はむ
しろそれぐらいでやめておきましょうとアドバイスをすることの方が
多いです。無理なく毎日こつこつと適切な歩数を歩き運動することを
おすすめします。

1日の適切な歩行量の目安は?
【65歳以上】
男性→7000歩
女性→6000歩
※約3.5km(40分)
【65歳以下】
男性→9000歩
女性→8500歩

歩き方のポイントは平坦な道を歩くよりも、ジグザグに歩いたり、坂道
を選んで歩くことです。私の教室にもコロナ太りなので痩せたいという
目的で来られる方がいらっしゃいますが、一般的には30代以降の方は
基礎代謝が落ちていますので短期間で痩せるのは難しいです。また急激
に運動をやりすぎると体が壊れたり、痛みが出てきたりします。痛みに
ついてですが、動いた方がいい痛みと、動いてはいけない痛みがありま
すので、そこはお医者さんや運動の専門家に見極めてもらいながら行う
ことが大事だと思います。例えば、足に痺れがある場合、狭窄症(きょう
さくしょう)の可能性もありますので間違った運動がかえって体を壊すこ
とになります。ですから私はその方その方の症状や体の状態をしっかり
ヒアリングして適切なアドバイスをするように心がけています。特にシ
ニアの方は早く早くとついつい頑張りすぎる傾向があります。

フレイルを予防する運動法とは?

フレイル予防のための運動法は「筋トレ+有酸素運動」の組み合わせに
なります。どちらかだけではなくこの2つはセットです。フレイルという
ことは低栄養状態にあるわけで、代謝が衰えていて栄養を体の中に吸収
できていない状態です。食べたものをしっかりと体に吸収して活用する
には適度な筋力が必要で、まず筋肉量を適正にすることが大切です。筋
トレで筋肉量を増やし、次に一定の筋肉量がなければできない有酸素運
動を行う流れが正しいやり方です。どこの筋肉量から増やすのかですが、
最初は下半身です。下半身の筋肉は一番大きいので筋肉がつきやすく簡
単です。全身の筋肉で下半身の筋肉が占める割合は約70%ですから効率
が良く改善効果も出やすいです。太ももやふくらはぎはもちろん、腸腰
筋(ちょうようきん)と言われる上半身と下半身をつなぐ腰周りの筋肉も
意識することが大切です。腸腰筋とはインナーマッスルと言われる部分
で、腿(もも)や膝を持ち上げる動きを担っています。立つ姿勢を保つ際
に重力に抗う筋肉でもあり、運動能力のほか、姿勢やプロポーションに
も関わってくる重要な筋肉です。下半身の筋肉を簡単に鍛えるのは「も
も上げ」がおすすめです。筋トレと言うと体を壊すんじゃないかと敬遠
しがちで、手っ取り早くウォーキングから入る方が多いのですが、ウォ
ーキング(有酸素運動)は筋肉量を増やしてからやるべきですので、まず
はご自宅でも簡単にできる筋トレ「もも上げ」をしっかり行ったうえで
歩くといいでしょう。

自宅でもできるおすすめの運動は?

「もも上げ」のやり方ですが、私の教室でおすすめしているのが、椅子
を体の脇に置いて、椅子に手を添えながら椅子側の足を上げる方法です。
簡単そうに見えますが、何回か上げ下げしていると意外ときつくて太も
もに効いてきます。これを1分間1セットで行ってください。シニアの方
は、はじめはどなたかに体を支えてもらってかまいません。注意点は上
げる足を間違えないようにすることです。逆の足を上げると姿勢が悪い
状態になって、転倒の危険性があります。この運動のよい点は、上げて
いる足は太ももの筋肉を鍛えていますし、逆側の立っている足はバラン
スを取っていますので両足同時に鍛えることになります。つまりバラン
スを取りながら腸腰筋を鍛えているので一石二鳥の運動法です。この筋
トレを行ってからウォーキングをすると有酸素運動の効果も上がります。
この「筋トレ+有酸素運動」を定期的に行えば、フレイル予防になりま
すし、腰痛の予防や改善にもなります。健康運動は地味なことをコツコ
ツ行うことに尽きます。これが遠回りのようで健康への一番の近道なの
です。

PROFILE
NPO法人 cocofull 代表/健康運動指導士 今井 淳一先生

運動だけで健康を取り戻すというよりも心の満足が大事だという想いか
ら、心を満たす「ココフル」という社名にしました。教室で健康運動の
指導に加え、ご自宅まで出張して個別に体操とトレーニングの指導を行
っています。

〒815-0031 福岡県福岡市南区清水1丁目24-31 浪花モンテビアンカ3階
TEL 092-555-2590
https://www.cocorofullfull.com/

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